「人身事故」と「物損事故」の届出に違いはあるのか?
かなり良くある質問で、交通事故に遭われた方が「人身ではなく物損でも変わらず補償しますよ」と保険会社から言われていますが、本当ですか?
というものがあります。
結論から申し上げますと、単純な傷害慰謝料(怪我をしたことに関する慰謝料)であれば、「人身事故」にするか「物損事故」にするかで慰謝料の金額は変わらないのが通常でしょう。
この理由は簡単で、弁護士が介入した場合の傷害慰謝料の算定基準は、「重症かどうか」と「どれくらいの期間治療したか」によって決まるからです。
要するに、「人身事故の届出」を出したかどうかは、慰謝料計算の基準ではないため、慰謝料を増額する事由に当たりません。
どういう場合に「人身事故」の届出の方が良いか?
①「過失割合」で争いになりそうな事件
ただし、あらゆる事案で「人身事故の届出」を出さなくて良いというわけではありません。
まず、「過失割合」で争いになりそうな事件であれば、出した方が無難かと思います。
これは、「人身事故の届出」をすることで、実況見分調書が作成されるからです。実況見分調書とは、事故の状況が記載されている書面であり、これに基づき事故の状況の主張立証が行われます。
この実況見分調書やドライブレコーダーの映像など、客観資料が無い場合、過失を争っていくのはかなり難しくなると思ってもらった方が良いです。
このように、過失を争うという事案では事故状況の保全のため、「人身事故の届出」をした方が無難なのです。
②後遺障害が見込まれる程、怪我の状況が重篤な事案の場合
もう一つ、「人身事故の届出」をした方がよいパターンとしては、後遺障害が見込まれる程、怪我の状況が重篤な事案の場合です。
こういった事案の場合、後遺障害の申請の段階や賠償交渉の段階で実況見分があった方がいいということが考えられます。
それゆえ、こういった重大事案でも「人身事故の届出」をしておいた方が良いのです。
まとめますと、「人身事故の届出」を出さないと、慰謝料が直ちに減るということはないものの、出しておいた方が良い場面というのは存在します。
もし、「人身事故の届出」を出した方がよいか迷っているという方は、ご相談いただければ、現状を踏まえ、ベストなご回答をいたします!